命懸けの伝言

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「無理な方法って?」 それを今考えてんだよ。 こっちの壁が駄目なら、この部屋の出入口はこの窓と、ドアだけか……。 「窓は俺が割る前は通れないぞ」 わかってる。 ドアだけしか通れないのに、どうすればオールバックをこの位置で、この姿勢に出来る? ていうか、本当にこれで合ってたか? 「間違いない。扉にケツがつくぐらいピッタリの位置で、足伸ばして身体は前のめり。体力測定の時の長座体前屈みたいな姿勢だな」 最初ここに入った時にこいつを動かしとけば、何とでも言い訳出来たのにな。 「今更そんなこと言っても遅いって」 いっそのこと、入った時に俺と桐沢で動かして、この姿勢にしたことにしようか? 「……俺たちがそんなことする理由は?」 実は俺は座り神様を信仰していて、死ぬ時は座った状態じゃないと、天国にいけないんだ。 「なんだ。そういうことだったのか。これは酷い誤解をしていた。すまない、許してくれ」 いいってことさ。 ハハハハハ。 「ハハハハハ」 ハハハハはぁ……。 「無駄話してる場合じゃないんだったよな」 わかった。真剣に考えよう。 死んだオールバックを開いた扉にもたれさせて、外から引っ張りながら扉を閉めたらどうだ? 「当たり前のことだけど、扉を締め切るには自分の腕を抜くことになる。オールバックの身体を引っ張ることが出来るのは、腕の太さ分だけ扉が開いてるところまでだ」 それだけの長さでも引っ張らずに扉を閉めれば、オールバックの身体はその長さだけ扉から離れることになる、か。 「そうだな。……扉の下の隙間を使うのはどうだ? 糸を通して、引っ張る」 糸が切れるだろ。 「現実の俺は、身体が切れるような糸に追い詰められてるんだぞ。それぐらい丈夫な糸なら、出来るんじゃないか?」 確かに……。 …………いや、やっぱり無理だ。 「何でだよ」 あの糸は丈夫さで切ってる訳じゃない。 切れる要因は細さと速さだ。 紙で指が切れるのと、同じ理由だな。 「もっと太くすれば……」 隙間を通らない。 「なら帯状にしたらどうだ? 布みたいなのを長くして通せば」 ん……。それならいけるかも。 よし、やってみるか。
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