命懸けの伝言

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自分で出した結論に、強い衝撃を受けた。 ここにない筈の身体が、熱い。 軽い目眩さえ覚える。(ここで気を失ったらどうなるんだろう?) 本当にこれで合ってるのか? 自分でも信じられない。 「だけど辻褄は合う」 部屋の中に居た筈の俺が、隣にいた。 その通りだ。辻褄は合う。 でも認めたくない。 「認めたくなくても、有り得ないことを全て取り除いて辿り着いた答えなら、それが真実だ」 ……いや、決めゼリフっぽく言ってくれてるとこ悪いけど、そんな風に理屈で辿り着いた結論違うから。 「なら他にどんな答えがあるってんだよ。現実から逃げるのはやめろ」 …………。 反論の言葉が思い付かない。 気が付けば扉も、ビルの壁も、その向こうの死体も、暗闇に消えていた。 残ったのは、俺と俺だけ。 俺と俺の俺による俺のための空間だ。あの演説は誰だっけ? リンカーン大統領だっけ? 「おい、思考を逸らすな」 逸らしたくもなるよ。 こんなのが真実だって言うんなら。 「ふて腐れても、何も始まらねえよ」 ……わかったよ。 自分で出した答えを、真実として受け入れる。 その上で考える。 今の状況を抜け出す為にはどうしたらいいか。 必要なのは、何なのか。 「……記憶だな」 そうだ。 あとは自分の記憶さえ取り戻せたら、何とか切り抜けられる。 記憶さえ取り戻せれば……。 記憶…………。 …………。  * * * *
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