少女の悔恨

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「待て、賢吾」 ナイフを振り上げた賢吾を、俺は呼び止めた。 賢吾は振り下ろしかけたナイフを、ピタッと止める。 「な、なんだよ。認める気になったのか?」 苗字ではなく名前で呼ばれた事に、少しうろたえた様子の賢吾。 そんな賢吾に、俺ははっきりとした口調で答える。 「一樹を殺した犯人がわかった」 「…………アンタ……、記憶が戻ったのか?」 「察しが早くて何よりだ」 俺はニヤリ、と笑って見せる。 賢吾の顔は、戸惑いを見せる。 「――ま、待て! 記憶が戻った所で、アンタが犯人じゃない事にはならない! あの状況、殺したのは絶対にアンタなんだ!」 「なんでそう言い切れる?」 俺は余裕の笑みで聞き返す。 「そ、それは、あの部屋が密室で、最初に入ったのがアンタだからだ」 「密室って言うのは、扉に鍵が掛かってたのを言うのか? あれぐらいはちょっとピッキング出来る人間なら、簡単に開けられるぞ」 「それだけじゃない! 扉の向こうには一樹さんが居た! 仮に扉の外から、一樹さんの身体を引っ張りながら扉を閉めても、扉にピッタリ腰を付けさせるのは無理だ!」 「成る程な。確かにお前の言う通りだ。閉めた扉の外から一樹をあの姿勢にするのは、普通なら不可能だよな」 ここで俺は一度、言葉を切って、フゥ、と息を吐いた。 「ところでお前、俺が組織を裏切ったとか言ってたな」 突然の話題の切り替えに、焦る賢吾。 「な、なんだよ。アタシを上手く言い負かせられないからって、論点をすり替えるつもりか?」 「いや? 切り札は最後に取っとこうと思ってさ」
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