頭の無い朝が来る

2/9
前へ
/12ページ
次へ
朝、いつものようにやかましく鳴る目覚まし時計を止め、目を開ける。 ベッドから身体を起こすと、やけに頭が軽く感じられた。 ぼーっとしたまま階段を降り、顔を洗うために洗面所に向かう。 鏡に立ち、頭が軽かった理由がわかった。 昨日まであった俺の頭が綺麗さっぱり無くなっていた。 首から先はまるで今まで頭が無かったようにすべすべの皮膚に覆われていた。 ああ、夢だなこりゃ。 ほっぺを抓ろうとするも肝心のほっぺが無いので、諦めて部屋に戻る。 部屋に戻り制服に着替える。頭が無いおかげでものすごい着やすかった。 制服に着替え終わると、俺は頭が落ちてないか部屋を探してみる。やっぱり落ちてなかった。 変な夢を見てるな〓、と思いながら階段を降りリビングに入る。 父さんも母さんも既にリビングに居て朝食をとっていた。 てっきり頭の無い俺を見て悲鳴をあげられるかと思ったけど、まるで頭があるように俺に朝食を食べるよう言ってきた。 今気づいたが、頭が無いのに視覚も聴覚もしっかりある。 だが、目の前の食パンはどうやって食べればいいのだろうか? 仕方ないので「今日は食欲がない」と言ってごまかし、鞄を掴み家を出た。どうせ夢だから飯を食べなくても平気だろう。 通行人も頭の無い俺を特に気にしたふうでもなくすれ違う。 どうせ夢だから学校に行かなくても平気じゃないか、と気づいたのは学校に着いてからだった。 夢はまだ覚めない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加