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《Jun20 AM11:52》
7/28の夏季大会まで残り39日
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「起きてください坂本さん。そろそろ着きますよ」
その声でまどろみから少し目が覚めて、夢心地の間に感じていた諸々が薄れてゆく。
まぶたを擦って凝り固まった薄目を空けた頃には綺麗さっぱり思い出せなくなっており、がたんごとん、という電車が線路を叩くリズムが残るのみだ。
目的地へと続くローカル線のゆったりした歩みにいつしか眠気づいたらしい。傾いた首を隣の彼女の肩に預けてしまっていた。
坂本ゆかりはあくびを噛み殺しながら、隣の友人に向き直る。
「ん……。ごめん、うとうとしてた。重かった? ヨダレたらしたりしてないよね?」
「大丈夫ですよ。肩くらいいつでも貸してあげますから」
膝に両手を乗せて姿勢正しく座る少女は、楚々とした動作で長いストレートの髪を払い、生真面目さがうかがえる顔つきをやわらげた。
ぴしっとした白シャツにレディースネクタイを着用し、黒と赤のチェックのスカートから伸びるスラリとした足と、それを覆う黒いストッキングという、制服風の私服でありながら学生らしからぬ物腰が独特の雰囲気を生んでいる。
羽柴千早。ゆかりのクラスメイトにして、紆余曲折の末に新しく出来た親友だった。
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