一:焼き付いた瞳

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「知ってんのよぉ、あんたが最近女の人達と遊んでるってのを」 「え゙………ぁ、いやそりゃなエルザ……」 冗談で言っている訳ではない。 正直エルザ自身もこれには半信半疑であるのだが、ただの噂でなく実際にこの目で見たのである。 なので、この問い詰めは確証を得る為にも必要であった。 ………この反応だと、どうやらマジみたいだけど。 しどろもどろになっているアレックスの肩を掴んで勢いよく引き寄せたのは、意外な事にジャックである。 「おいアレックス、どういう事だ! 嘘だろ、どうせ嘘なんだろ! そうだよな!」 「ぅおうっ……! な、なんだよジャックいきなり! びっくりするじゃねぇか」 「驚いたのはこっちだ! お前、どうせまた変なやっかい事に巻き込まれてるだけなんだろ、そうだよな、なっ!!」 「ぇ…………いや待て、ちょ、ジャック、おまそりゃ洒落にならん!」 エルザの言ったそれが余程衝撃的だったのか、今や彼の喉元に食事用のナイフを突き付けている始末である。 ジャックにしては少々冷静を欠いた行動であった。 ……まあ、そうなるのも分かるけどさぁ。 などと心の中で呟いてる間に案の定カレンがジャックの手を掴んだ。 彼女と目が合い、彼ははっとして表情を決まり悪くする。 その微妙な間を埋めたのがジュディで、相変わらず伺うように率直な突っ込みを入れた。 「あの………別にいいんじゃないですか? こういう事ってプライベートですし、アレックスさんも答える気が無いのならそれで……」 「安心してジュディ、こいつに人権なんて存在しないから」 「いやなにさも当然なように言ってんの!? んなワケ無ぇだろブビっ!!?」 「こーいう風にぶん殴っても人権が無いから文句言われないのよ」 「あの、それはせんぱいだから誰も言えないんじゃ……」
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