二:隻眼と隈眼鏡

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「ていうか、結局それって検診サボったって事っすよね」 「まあ、当たらずとも遠からずって感じかなぁ~」 「ドンピシャっすよね」 エルザが目を泳がしている間にレジ作業は進んで行く。 一分とも経たずして会計が映し出される。 袋には入れていない。 入れる程の買物量ではないし、入れた所で『余計に金が掛かる』だけである。 急激な人口減少とインフラ整備の影響を、こんな所で感じてしまう。 ウェストポーチから財布を出した途中で、ふと。 「あっ、どうです? 先日入ったばかりなんすよ、ソレ」 エルザの視線がそこに注がれた事により彼が勧めて来る。 レジ前の小棚にひっそりと陳列されているのはドリンクタイプの栄養剤であった。 「へぇ、珍しいわね。 てっきり生産ラインは止まったままだと思ってたのに」 「や、多分工場は動いてないっす。 ていうか、この会社そのものが消えたままじゃないっすかね。 これは前回の補給物資の中にたまたま入ってた奴なんすよ」 そりゃそうか、とエルザは呟く。 医用品が欠乏している今、栄養剤だけが取り揃っている訳が無い。 「どうっすか、お一つ。 今じゃ超貴重! 後にも先にも手に入るのはこれだけかもしれないっすよぉ~?」 「うーん…………けど高くない? これ」 貴重な栄養剤が何故今も売れていないのか、その理由をエルザは値札で確信した。 なにせ、手書きのそこには堂々と二桁の数字が書かれているのだ。 セントではない、ドルである。 おまけに十の位は後僅かで次の桁に飛びそうな数だ。 欲しくても手を伸ばす人間は余りいないだろう。 こんな物を買うなら他の医用品を買う。 栄養なら食料品を買った方がまだ安上がりだ。 「値には貴重度とロマンも入ってますから」 「ロマンって何がよ。 ………って、アンタこれよく見なさいよ。 これ眠気覚ましの薬も混ざってるじゃない」 「え、マジっすか? うーん、まあ、いいんじゃないっすかね。 多分多少なりとも栄養になると思いません?」 「思いません」
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