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「あの………これ、全部すかっ?」
「ぁっ、はい。 もしかして、個数制限とかあるんですか……?」
「あ、や、そーゆうのはとくに『付けて』無いっすけど……」
「よかった………じゃあ、大丈夫ですねっ」
……貴女の財布が大丈夫?
エルザはまじまじと女性を見る。
買物の様もそうだが、その『見てくれ』も十分に一目を引く物であった。
赤黒くシミだらけなボロボロチュニックに、ダメージと呼ぶには行き過ぎなカットパンツ。
破れた生地の下から覗く肌は真っさらな―――それこそ白銀のような肌が。
しかし、それと一緒に赤紫に広がる痣跡が見え隠れしている。
見ていて痛々しい傷だ。
痣は身体のあちこちに存在している。
膝、腿、チュニックから出てる腕首に、首筋と―――顔まで。
整った面眸も、その痣のせいで台なしになっているのだろう。
エルザがそう想像する事しか出来ないのは、女性の金髪がその半分以上の領域を隠してしまっているからであった。
隙間からかろうじて見える瞳は宝石のように透き通った青で、その下瞼は真っ黒な『くま』に覆われて…………
「…………ゃ、」
待って……。
エルザは咄嗟に頭を振り払った。
振った拍子で右目が痛くなるが、そのおかげもあってか冷静になる事が出来た。
そうさ………。
確かにあぁいった特徴的なくまには見覚えがあった。
ただそれだけだ。
たったそれだけの既視感。
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