四:不穏の目覚め

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今朝の目覚めは最悪であった。 今まで落ち着いてきた傷の炎症が再発し出しているのを見て、エルザは洗面所の鏡の前で忌々しく舌打ちをした。 「はあ…………やんなっちゃう」 今更新たな心境が生まれる訳もない。 動揺するでも、悲観するでもない。 ただ単に、『また起こった』、『いつものこと』、と思うしかないのだ。 慣れてしまっている事にも嫌気がさす。 全く以て最悪な気分だ。 このまま、この右目の中の肉を爪で抉り出せたのならどんなに気分が晴れ上がる事か…………。 しかし現実問題、そんな事しても悪化するだけなので、これもまたいつも通りに棚の鎮痛剤に手を伸ばした。 その場で唾で飲み込み、一息。 上げた眉の下で血漿が零れ、タオルで拭う。 押さえつけて、目頭の内側でぶちゅりと何かが響く。 喉に漿が漏れて、苦味が口に広がる。 「……………っ」 意識せず、また舌打ち。 口は濯がず、洗面所から直ぐ様出て、冷蔵庫の缶を掴み取った。 何の缶かも確認せず、プルトップをあけ、そのまま一仰ぎ。 苦虫を噛み潰したように顔をしかめたのは、眠気覚ましに買ったレモン果汁入りドリンクであったからである。 無駄に炭酸を入れている分、その酸味は強烈だ。 吹き出しこそしないものの、エルザの舌と喉に大打撃である。 変な所に入ったのか、大慌てで咳き込むエルザの横でチャイムが鳴った。
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