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あれから、どれ程の月日が経ったのでしょう。
あの日のような蒸し暑い季節は過ぎ、今は外で木枯らしが吹き始めています。
……あの人は、生きているんでしょうか?
生きてたとして、元気にしているのでしょうか?
気付けば、私はそんな事を考えています。
毎日外を見ては、そう思うのです。
生きているかもわからない彼女を……。
あの頃が懐かしくないと言えば嘘になるし、出来る事なら、あのままでいたかったです。
けどそれはただの幻想に過ぎません。
私が求めても、手を伸ばす先には既に何も置いてはいないのです。
彼も、彼女も、皆も。
何もかもが私の手から落ち、二度と戻って来る事はない。
あの時、私もついでに死んでいればどれほどいいかと考える事もあります。
しかし現実は私を『いたぶる』ことはしても、決して死なしてくれはしないのです。
これは運命なのでしょうか。
これはさだめなのでしょうか。
私はこんな運命を欲しいと思った事はありません。
なら、これもその運命の内なのでしょうか?
私の身体についたこの血も、私が食べるこの肉も、その運命の内に入るのでしょうか?
渇きは癒えず、飢えは満たされず。
私は何が欲しいのでしょう?………ああ、また彼女に会いたい。
彼にも会いたい。
しかし会って何をしましょうか。
それが一番の問題です。
きっと私は口ごもってしまうのでしょう。
取り合えずは、この肉を食べ終えてから考える事にします。
食べればいい案も浮かぶでしょう。
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