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翌日の早朝、エルザの顔はそれはもうひどかった。
「うわっせんぱい………ど、どうしたんですかそれっ」
ジュディが最初に玄関を開けた時、思わずそう訊いて来た。
ろくすっぽ綺麗に洗わなかったせいで頬には血がこびりつき、顔もむくんでしまっている。
また寝起きのままだけに、髪が蔓のように広がってしまって、おまけに顔についた血が張り付いて………。
「ご……強盗ですかまさか!」
「おばか、そんなわけ無いでしょ。 ………ちょっと、傷口が開いただけ、寝てる間にね」
「寝てる間ってせんぱい……そんなまた………あぁっ! ちょっと酷いですってこれ!」
「ちょっと、朝から声を上げないでよ。近所迷惑でしょ」
寝室の様子を確認して、ジュディがますます口調を荒げる。
「どうしてすぐに洗わないんですかぁ! シミになりますってこれ!」
「あのねぇ、深夜過ぎにそんな気力起きるわけ無いでしょ。 止血するのに手一杯だったのよ、こっちは……」
「まさかお風呂場も…………あぁぁぁやっぱりぃ!」
「ていうかなに自然に人の部屋踏み込んでるのよアンタ」
「そんな事言ってる場合じゃないですってこれ……!」
「いいから……ったくもう」
朝にこのテンションはキツい。
エルザは文句混じりにそう呟いて、「取り合えず用意するから外で待ってなさい」と無理矢理彼女を部屋から追い出す。
「ま、待って下さいよ! 私も手伝いますからっ、せんぱいは早く顔を冷やして下さい! むくみ取れませんよ!?」
「今朝から顔洗ってるって」
「そこまで酷いと氷使わないと駄ぁ目ですってぇ! 不細工なままですよ!」
「おいコラ今なんつった」
結局身体の血と寝癖はシャワーを浴びることでことなきを得たが、顔のむくみは最後まで落とす事は出来ず、ジュディの言う『不細工顔』のまま服に袖を通す結果となってしまった。
酒場へ向かう為に通りを歩き続けるなか、ジュディが氷嚢を宛てがってくれるも、「それくらい自分でも出来るから」と早々に奪い取り、彼女を涙目にしてしまった。
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