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「辛い・・・と、思ったことはありません。けれど、不安に思ったことはあります。自分の名前も、両親の顔も、友達の顔も、何一つ覚えていなかったから、自分が誰なのか、なぜここにいるのか。」
「名前も?だってあなた、響音リオンって名前なんでしょ?」
・・・うっかり余計な情報を与えてしまったようだ。そうだ、私の名は、彼女からもらったのだから。覚えていないというのはおかしい話だ。
「その名前は、旅の途中に出会った女性からもらった名前です。名前を知らなかったから、ありがたくいただくことにしたんです。」
「それで、その名前を名乗っているのね。」
「はい。大切な、名前なんです。」
サクヤさんは、ニッコリと微笑んだ。
「あの、サクヤさん。」
「なに?リオンちゃん。」
「私に、ゴッドイーターとか、アラガミ、フェンリルについて教えてください。今の私に必要なのは知識です。私は何も知りません。けれど、何も知らないまま、ここにいる気はありません。」
サクヤさんは一瞬驚いた顔をした。けれど、すぐにその表情は笑顔に戻り、
「いいわよ。私でよければ。」
その後、サクヤさんは出掛けてしまうまで、いろいろ教えてくれた。おかげで、今の世界情勢、アラガミについて、ゴッドイーターの仕事、そしてフェンリルについて知ることができた。これは大きな収穫である。
あとから看護婦の方から教えてもらったことだが、サクヤさんは任務があったというのに、私のためにギリギリまでここにいてくれたそうだ。
・・・今度会ったとき、何かお礼ができればいいな。
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