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あれから更に三日が経過した。私はまだ、フェンリル極東支部の病室にいる。記憶喪失者として、どこまで記憶にあるのか、どこからの記憶が向け落ちているのか、その検査があったためだ。精神検査のようなものだと、ペイラー博士が言っていた。
検査の結果、基本的な生活を送る程度の記憶と感情は残っているとのこと。何故それ以外の、両親や自分の名前、それまでの生活についての記憶が抜け落ちてしまっているのかはまったく不明だと言う。
「ところで、リオン君。君に今回はもう一つお知らせがあるんだ。」
「お知らせ、ですか?何のお知らせですか?」
私が問うと、ペイラー博士の細い目がますます細くなった。その瞬間、空気が硬くなったような気がして、背中がぞっとした。
「君、この間血液と細胞を採取しただろう?」
「はい。」
「その二つを調べて遺伝子情報をコンピューターに入れて調べたんだよ。その結果、なんと君の名が新型神機の適合候補者として挙がったんだよ!」
「新型神機・・・ですか?」
「詳しいことは訓練場にいけばわかるから、とりあえず行ってみなよ。」
それだけいわれ、極東支部内の簡易地図を渡すと、ペイラー博士は出て行ってしまった。・・・新型神機とはなんなのだろうか。サクヤさんから、神機についての説明は受けていたが、新型というのは初めて聞いた。と言うことは、旧型と言うのも存在するのだろうか。
そして現在、私はフェンリル極東支部訓練場入り口前に立っている。フェンリルで支給される制服に身を包んで。組み合わせは自由だと言われたので、上下色をカーキで統一。長い髪は邪魔だったので、束ねてポニーテールにした。
「緊張するな・・・」
入り口は頑丈そうで、よほどの攻撃でなければ壊れる心配はなさそうだ。・・・こんな厳重なところで適合試験をすると言うことは、何か大掛かりな試験をするのだろうか。もっと説明があればよかったのだが、ペイラー博士は何も言わず去っていってしまったし、聞けそうな人もいなかった。
・・・本当に、大丈夫なのだろうか。
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