出会いのキロク

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「・・・なんか、一気に疲れました・・・」  適正試験は驚くほど簡単なものだったが、とてもいい感じとはいいがたいものだった。ケースに腕を挟まれたと思ったら、腕を何かに喰われる感覚、言いようのない痛み、それが一気に押し寄せてきた。再びケースが開いたとき、私の腕には、ゴッドイーターを示す、赤い腕輪がつけられていた。 『おめでとう、今日から君は、新型ゴッドイーターだ。』  感情のこもっていないあの言葉、声が、再び頭を過ぎった。  これから、メディカルチェックが行われるそうだ。気分が悪くなったら申し出るよういわれたが、すでに気分は最悪である。とりあえず座って落ち着こうと、近くの休憩スペースを見ると、同じ年頃の青年が座っていた。私は、その横に腰掛ける。 「ねぇ、ガム食べる?」 「へ?」  急に声をかけられたため、腑抜けた声が出てしまった。声をかけた青年の方を見ると、彼は自分のかばんをごそごそと漁っている。 「あ、切れてた。今食べてるのが最後だったみたい。ごめんごめん。」 「あ、いえ、お構いなく。」  彼の視線は、興味深そうにこちらに向けられている。話しかけるべきか悩んでいると、先に彼のほうから話しかけられた。 「ねぇ、あんたも適合者なの?」 「あ、はい。」 「俺はコウタ。ねぇ、俺と同じか年上っぽいけど、何歳なの?名前は?どこ出身なの?」 「え、え・・・と・・・。」  一方的に話しかけられて何から話せばいいのかがわからない。彼は人見知りしない性格なのだろうが、私はあまり人と話すのが得意ではない。これまでも、何度か話しかけられたことがあったが、適当に相槌をうって、適当な頃合に抜けることが多かった。唯一、私が安心して話すことができるのは、【リオン】くらいではないだろうか。  
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