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「ここも、廃墟か。今まで見た中でも、大きい街・・・都市だったのかな?」
今私がいるのは、過去最大級の都市だった場所。いくつものビルが建ち並んでいるが、どれも原形を保っていない。丸い穴が開いているもの、大部分が欠けているもの。壁の一部しか残っていない建物もある。
ビルはたくさんあるのに、人も、動物の姿もない。まぁ動物なんて、旅を始めてから一度も見たことないけれど。
「すごく、静か。何も、ない。」
私は、かつて教会だったであろう建物の中に入った。あちこち欠けた女神と思われる女性の像が、寂しげな表情で地面を見下ろしているように見えた。
「まるで、泣いているよう。」
しばらく、女神像を見つめていると、遠くから獣のような雄叫びが聞こえた。旅をして初めて聞く、獣の鳴き声。教会の外、その鳴き声はどんどん近づいてくる。
発信源を探すため、私は外に出た。
「・・・・・・・・・あれは・・・。」
そこにいたのは、大きな化物。【彼女】が教えてくれた、ライオンと言う動物に似ているが、大きさは比べ物にならない。きっと、あれが【アラガミ】と呼ばれるものなのだろう。
影から見ていると、大型の銃や、刀を持った数人がアラガミに攻撃を始めたのが見えた。
弾丸が飛ぶ音。肉が切り裂かれる音。アラガミの雄叫び。爆音。
思わず身震いした。頭が、全身が、逃げろと警告を出している。しかし、足が震えて身動きが取れない。今まで経験したことのない焦燥感。これが『恐怖』というものか。
「逃げなくちゃ・・・。」
そう呟いたとき、アラガミと、目が合ってしまった。
私に気づいたアラガミは、攻撃をする人々を無視し、私に向かって駆けてきた。私は身動きが取れない。けれど、アラガミは確実に私を狙っている。
「おい!逃げろ!」
遠くで、男の人が私に向かって叫んだのが聞こえた。けれど、もう遅かった。
最後に見えたのは、私に喰らいつこうとするアラガミ。そして、その間に入り、攻撃を仕掛けた、大きな刀を持つフードをかぶった人物の姿だった。
私の意識は、そこで途切れた。
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