1人が本棚に入れています
本棚に追加
~序~
鹿島から笹川へと向かう一団…あたりはうっすらと暗くなり提灯の明かりを頼りに足早に歩いていた。
民家のを抜けて人気の無い辻堂を通り掛かると不意に辻堂の扉が開いた。
「誰でぇ」
丸に笹の字の半纏を羽織った若い衆がいきり立つ
数人で中央に居る人物を庇うように立ちはだかり提灯を辻堂へと照らす
「やっとお出ましかい」
中から出てきた男
ずんぐりとした体格無造作に生えた角刈りの頭に杖をつき俯きながら近寄ってくる
「誰だおめぇ
笹川としっての事か」
「あっしにゃ恨みつらみは無いが、これも一宿一飯って奴でね…笹川のお貸元あんたぁチィとおいたが過ぎたねぇ」
「てめぇ飯岡か」
男はニヤリとした。
「たったひとりで来やがってこの人数相手にする気か」
「すまないねぇ
見えないんだよ…目が…」
「何を おめぇめくらか」
男は杖を顔の前にかざし右手で杖の柄に手をかける
「それが…何かあんのかい」
その瞬間体制を沈め左手を強く握り左から横に凪いだ
キンッ!!
男の前にいた男が突き飛ばされ尻餅を付いた。
男の凪いだ仕込みはその動きを止められ男は身体を右に捻ったまま静止した。
男は鼻を何度か啜ると口を開ける
「おや…女の匂いがするなぁ…」
「解るのかい…匂いで…」
左手で仕込みを振り男の一閃を止め
左耳を男に向ける
「…まいったね
女に止めらるたぁ…
いくら目が見えねぇからってやきが回ったかねぇ」
「そいつぁお互い様だよ」
そう言うと男は少し眉をひそめ暫くすると仕込みを引きゆっくり顔の前で鞘に納める
「女…名前は」
「…はる…
そう名乗ってるよ」
「…おめぇさんめくらかい」
「みんなはそう言うねぇあたしはただ生れつき闇しかみえないだけなんだがねぇ」
「そうかい…
こりゃ今日は日がわりぃ…退散するかい」
男はそういうと辻堂の裏へと歩きだした。はるはゆっくり仕込みを鞘に納めた
「やろう!」
はると男のやり取りをぼっと眺めていた若い衆が一斉に辻堂へ駆け寄ろうとした
「おめぇら待ちな!」
後ろで若い衆を静止する。
「親分」
若い衆が振り返る
「止めとけ 行きゃおめぇら死ぬぞ あれは飯岡の座頭市だ」
若い衆が一瞬たじろいだ。
「はる
今日はおめぇさんに助けられたぜ
一家に帰って礼はたっぷりさせて貰うよさあおめぇら先を急ぐぜ」
「へい」
一団は又一家へと歩きだした。
一団のすぐ後を杖をつき歩いてついていく。
はるはゆっくり顔を後ろに向けた…座頭市…
最初のコメントを投稿しよう!