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体罰を終えた看守は、少し乱れたジャケットを直し、血の付いた鞭を一瞥しながら腰に差した。
今回も酷くやられた。
動けそうになく、血が溜まった床に横たわる僕を踏み、「汚らわしい」と吐き捨てて何事も無かったかのように看守は戻って行った。
聞こえるのは、荒い自分の息
それだけだ。
他には何もない。
「…………ん゛」
手を動かすだけでも苦しい。
しかし寝れば治る。
ふと、部屋の隅に隠している紙飛行機に目をやった。
まだ返事を書いていなかった。えぇと…何だっけ。
しかし一向に体は動かず、諦めて返事の内容を考えながら眠りについた。
『僕も、直接君と話してみたい』
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「お姉ちゃん、また薬増えるのぉー…?」
「そうなの。でも頑張って、応援してるから!リンちゃん」
お姉ちゃんに笑顔で言われちゃうと何だか押されちゃう。
お姉ちゃんと呼ぶが実の姉という訳ではない。慕ってこその愛称だ。
彼女はミク。この病院のナースだ。
幼い頃から病院通いの私とは裏腹に元気な子で、年もそう離れてはいない。
「だって苦いもん」
「薬は皆苦いわ。私はネギ毎日食べてるから健康だけどね!」
いやあまり意味ないよね
大して関わってないよね
確かに血は綺麗になるけどさあ!
仕事があるからまた、とお姉ちゃんは病室を後にした。
私はこれからこの薬と格闘しなければならない。だけど
「…名前、何て言うのかな」
この紙飛行機を送った貴方がいるから、頑張れる気がするの。
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