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ガチャン
無機質な檻の閉まる音。
灰色の狭い世界に僕は一人、佇んだ。
僕は、罪を犯した。
檻 と 紙 飛 行 機
僕は愛情というものを知らない
だから愛されることも愛すことも解らない。
父親は金遣いと酒癖が荒く、母親は病弱だった。
父の酒やギャンブルに金はいつしか消え、寝たきりの母の薬を買う金さえ無い。
それでも父は母に金をたかり怒鳴りつけ、遂には暴力。
それをストレスと感じた母は、幼い僕に当たり始めた。
病弱な為暴力こそないものの、言葉の虐待が激しかった。
父も僕を助ける気などさらさら無く、僕を違う目で見はじめる始末。
連鎖的な虐待、実の父に襲われるという現実。
僕ももう限界だった。
そんな日々は、現在14歳まで続き、そんなある日の事だ。
金が無くなった父は遂に母を殺そうとしたのだ。
酒が周り、収集が着かなくなっていたんだと思える。
酒を片手にナイフを持ち、止めようとする僕を押し退け、母のいる寝室へ。
僕に母を庇う義理はない、虐待を受けていたのだから。
しかし、何故か僕の体は動いていた。
ナイフを母に振りかざそうとする父の懐に飛び込み、押し倒す。
驚く父をよそにナイフを取り上げ、そして。
何故、庇ったのだろうか
今なら解る、ああしてでも母から愛が欲しかったんだ
愛されてみたい、ただそれだけだった。
そうは言っても僕は罪を犯した、只の人殺しだ。
直ぐに僕は警察に連行され、この狭い檻に入れられた。
父を殺したのは二日前、その間は色々な検査をさせられた。
しかし僕が虐待を受けていたという証拠は残って無くて、重い罪になった。
愛される
愛す
一体どんな感情なんだろうか
解らない、解らない。
ふと窓から覗く小さな空を見上げた。
元々広くなんかなかった僕の世界が、さらに狭くなる。
「…」
声は出ない。只空を見つめるくらいしか、出来ることはない。
少し長い髪を後ろで結わえ、唯一自由に出る事の出来る中庭に足を運ぶことにした。
どうせ何処もかしこも檻の中だ、少しくらい空が広い所の方がいい。重い腰を上げた。
「14歳か…珍しいね。そんな若いうちに何したの?」
「…人殺しだよ。誰アンタ」
「僕?名前はカイト。君は?」
「…レン」
中庭に出て早々、青い髪の男に話し掛けられた。
にこにこと笑うその雰囲気から、悪い奴ではなさそうだ。
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