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「レン君か。可愛いね。若いのに大変だねえ」
「…はあ」
男に可愛いとか言うか?
裏のない笑みで言ったその言葉と僕との関連性が見出いだせない。
ムカついたので視線で抗議してみたがカイトは気付かないし、気付けバカ。
カイトは近くにあった長いベンチに腰掛けた。横に立ってやっと目線が近くなったなんて本当涙出て来るぞ。
「レン君小さいね」
いきなり失礼な上僕の頭を撫でて来た。本人に悪気はないんだろう。
危ない雰囲気丸出しの他の囚人よりは遥かに優しそうだ。
細身に長身のカイトは、目線を僕よりも上の空に向ける。
「運が悪いね…ここは凄い荒れててさ、囚人同士の殺し合いなんて日常茶飯事なんだ」
僕に向き直り、細く綺麗な指が連なる手を差し出す。
「お互い仲良くしようね、レン君」
その手を見詰め、暫く躊躇った後恐る恐る手を添えると、優しく握ってくれた。
――暖かい手だ。
少し立って、カイトが手を離した後も手の温もりが消えず、変な感じがした。
暖かい手には、初めて触れた。
人間ってこんな暖かいものだったんだろうか。
「…カイト、さん」
「カイトでいいよ?」
「……カイト兄さあああん!!」
いつの間に僕は兄さんに心を許して、込み上げてきた感情を抱き着いて表現した。
あーあったかいいい!
いきなり抱き着かれた兄さんはかなり同様しているようで固まっていたが、解ってくれたのかまた頭を撫でてくれた。
僕は他人の温もりを初めて感じていた。
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