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「あはは、びっくりした」
「すみません」
「ううん、いいよ」
ぎゅうぎゅうと抱き着く僕を剥がさずに、頭を撫でていてくれた兄さんの手はずっと暖かかったから離れたくなかった。
「弟ができたみたい」
そう兄さんは笑った。
すると兄さんは僕の後ろを見詰め始めて、またにこりと笑う。
何だ、霊感でもあるのか?
「ははは、勝手に殺されちゃあ困るわ」
突然耳の近くで声がし振り返ると、物凄い近くに女の人の顔が映った。
「うおっ!」
「あはは、めーちゃん」
思わず声を上げ、驚き半分警戒半分で咄嗟に兄さんの後ろに隠れる。
「あははーじゃない!他の看守にそんな態度したら殺されるわよー?」
紋章等が着いた、真っ黒で全体的に際どい革の服を着て、腰に鞭と銃を差している。
見た所ここの看守か。
看守にも関わらず兄さんと仲よさ気に話している様は何だか異様だ。兄さんも気を許しているみたいだ。
「レン君、この人は看守のめーちゃん…じゃない、メイコさんだよ。結構怖いけど優しいからね」
兄さんに応じるようにおもむろにメイコさんが腰から鞭を取った。
パシリ、痛そうな音が響く。
「えぇ勿論、レン君にだけは優しいわよ」
「鞭らめぇぇぇぇ!!」
問答無用!と有無を言わさず兄さんに鞭をたたき付ける。わあい、怖いぞこれは。
「まあいいわ。とにかく時間だから早く中に入って」
痛め付けといてまあいいわはないだろ、鬼畜だな。
周りを見ると既に他の囚人は中に入っていて、残っていたのは僕達だけだった。
何と無く空を見上げると、既に空は赤く染まり、向こうから黒くなっていた。
生まれて14年間、空を見上げた事はあまり無いから何だか笑えてくる。
目線を下ろすとたまたま、同じように空を見上げる女の子が映った。
勿論檻の外で、ボロボロな服を着た僕とは違い可愛らしいワンピースを着て。
僕と同じ金髪を揺らし、ゆっくり瞳に空を取り込んでいる。
変な、感じが巡った。
女の子を見詰めていると、向こうも視線に気付いたらしくこちらを向いた。
金髪、青い瞳。
僕と似た風貌で違う女の子。
女の子も僕を見て止まっていた。
「レンくーん」
呼ばれ、我に帰る。
先に行っていた兄さんが入口で僕を呼んでいた。もう一度女の子を見て微笑み、兄さんの方へ走って行く。
何だろうな、この気持ち。
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