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粗末な食堂に着き、15分という決められた時間で急いで朝食を取る。
しかしご飯はあまり喉を通らず、音を立てながらがっつく囚人達を横目に、一人フォークを置いた。
顔に熱が集まって、真っ赤に染まっているのがよく解る。
突然、額に冷たい何かが触れた。目だけ動かした先では兄さんが眉をひそめて僕を見詰めていた。
冷たい何かは兄さんの手だった。
「レン君、だるかったら言うんだよ」
「あー…うん、大丈夫」
そう言うと、良かった、と兄さんは額の手を頭に置いてくしゃりと撫でた。
それが嬉しくて、更に熱が上がった気がした。
# #
朝食の時間が終わり、機械的に並んで食堂から檻へ移される。
欠伸をしていたら、一人の看守に腕を掴まれて半ば強引に檻の中に押し込まれた。
「おい」
看守が僕をまるでゴミを見るかのような目で見る。
「…はい」
「何故私が貴様のようなクズにわざわざ話し掛けてやっているのか解るか?」
看守は腰に差している鞭を取り、鉄格子に鋭い音を立てながら鞭を叩きつけた。
「――っ!」
痛々しい音と突然のことに少々驚き、看守の目が更に冷たくなっているのが解った。
「何を考えていたのか知らないが、フラフラしやがって」
カツカツと足音を立て、僕の前に立つと胸倉を掴み上げた。
遥かに看守の方が背が高い為、体が宙に浮き、息が苦しくなる。
「―――…っく、」
涙目で睨み付けたが、目の前の看守は嘲笑うだけで。
次の瞬間、痛々しい音が檻の中でこだました。突然の鋭い痛みに、思わず声を上げる。
「うぁあッ!!」
それが鞭だと気付くのに、少し時間が掛かった。
「仕置きだ、6550番」
看守の目が光り、その笑みは汚らしいと思えた。ニヤつく表情に人間らしさは伺えやしない。
6550番とは僕の囚人番号だ。名前はまず呼ばれない。
看守は僕を投げ飛ばした。
「なーに睨んでんだよ?殺されてぇのか?」
答える間もなく振り落とされる鞭。
鞭の当たる音に耳を塞ぎたいがその音を立てる原因が鞭と僕の身体。
酷く痛む身体。感覚が無くなるという表現も頷ける。
「ぃ゛ぁっ……」
「んなんで泣いてんなよ、毎日やんだからよ」
涙を流したまま看守を見た。見るなと顔を蹴られた。それでも信じられなかった。
毎日、やる? これを?
もう感覚もなく反射的に叫ぶだけだ。その間にも放たれる非道な言葉。
迫害とはこういう事か。
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