9人が本棚に入れています
本棚に追加
「レンくーん!!」
微かに聞こえた声を辿って目を覚ますと、心配そうな表情の兄さんが視界いっぱいにある。
時刻は夕方位か、兄さんが赤みを帯びているように見える。
「あ…兄さ…っ」
「いいよいいよ、無理しないで。痛かったよね」
寝かせたまま、僕の頭を撫でてくれる兄さん。
よく見ると兄さんの体中にも、沢山の傷があることに気が付いた。
「…毎日の事なの?」
「まぁ…うん」
言いにくそうに答えた。僕はやっぱり、と一つ溜息を着いていた。
否定を望んでいたから、かなりの絶望感に見舞われそうだ…。
「基本的僕達は人の扱いはされないことを覚えておいて。めーちゃんは隠れて僕達に話し掛けてくれてるだけだから」
「…うん」
「うん」
気持ちが下がった僕を元気付けようとしてか、兄さんは鉄格子の嵌まった窓を指した。
「じゃあ行く?中庭」
無言で頷いた。
またあの子、いるかな。そんな期待があったからだ。
# #
「やっほーって、うわーっ…レン君…」
人目を盗んでやって来たメイコさんは僕を見るなり声をあげた。
全身の痣を、眉をひそめて見詰めながらため息をついた。
「手加減ないのね…。私が言うのもあれだけど、酷いものねぇ」
それは自分も看守だが、という意味だろう。
頭を撫でてくれたメイコさんを本当の看守には思えなくなってきた。
柵の向こうを見ると、あの日見た影が見えた。
……いた。
あの、女の子。
手に何か持っている。
白い何かを持ち、僕の方へ走ってきた。
慌ててメイコさんと兄さんに適当に理由をつけて僕も駆け寄る。
柵から1メートル先には有刺鉄線が張り巡らされ、女の子はそれ以上近付くことは出来ない。
多分、それも計算での事だろう。
女の子は手に持っていた白い何かを投げた。
それは空を飛ぶ――紙飛行機だ。
「うわっ」
綺麗に入って来た紙飛行機を受け取る。
女の子はにこにこと笑いながら見詰めてきた。
見ろという事か。
最初のコメントを投稿しよう!