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丁寧に折られた紙飛行機を広げると、小さい字で何かが書かれていた。
『貴方とお話がしたい』
その文章を見詰めたあと、女の子を振り返るとにこにこと僕を見てくる。
一瞬、ドキドキと胸が鳴った。
返事を書こうと、紙とペンを取りに戻るため待っててとサインを送ると、女の子は頷いた。
監獄は中庭からそう遠くなく、運動に自信があるから時間はかからなかった。
返事を書き、紙飛行機を折って飛ばす。
『僕は囚人です。僕もお話がしたい、だけど出来ない』
綺麗に舞い上がった紙飛行機は女の子の手の中に落ちた。
すぐ返事が来て、紙飛行機が僕の頭に直撃した。
「いだっ」
「…あはははっ」
頭をさすっていると、女の子が笑った。
それは、もうきれいに。
初めて聴いた声は透き通っていて心地いい声色で。
紙飛行機を開いて、まだ見慣れない字を見た。
『ならこの紙飛行機を使えばいいわ』
一筋、光が射した気がした。
1話 女の子
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