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ニ
土砂降りだった雨も今はだいぶ弱くなったようだ。
梅雨は始まったばかり、久しぶりの激しい雨だった。
リビングで見ていた映画がENDを映し出していた。もう寝てしまおうと、私は寝室に向かった。借りてきたビデオは全部見てしまったし、別にすることもないし。
梅雨は苦手だ。
友人や恋人も雨降りだからと気遣かってか、会おうと持ち掛けて来ないし…。
第一、このどんよりとした窓の景色を眺めながら雨音を聞いていると気分が落ち込んでしまう。
少しだけアルコールに酔った体をソファーから持ち上げる。
リビングを出ていつもより暗く感じる廊下を突き当たり、寝室のドアを目指す。
ドアを開けると微かに甘い香りがした…気がした。気がしただけだ、現実は蒸し暑い部屋があるだけ。
何気なく自分の寝室を見渡す。
姿見の横には西洋風のドレスを着込んだ可愛いらしい人形が座っている。
彼女は少しだけバランスを崩して座っていた。きっと何かの拍子に傾いたのだろう。
お気に入りのアンティークドールを綺麗に座らせ
私はベッドに潜り込んだ。
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