プロローグ

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何でも勇者はまだ世界中を駆け巡っているらしい。 年代から考えて300年以上生きているなんて…質の悪い噂に違いない。 話を戻すが、"死"があるからこそ"生"は儚く尊いものだと感じるんだ。 生だけが尊重される今の世界の在り方は明らかにおかしい。 俺は洋式の広い家に独りで住んでいる。 …家族は皆死んだ、俺以外。 そして今日も世界について考える。 これは子供の頃からの日課だ。 知り合いは「今の世界は正しい」の一点張りで話にならない。 最初は「おかしい」と言っていたにも関わらず、だ。 だから俺は自分を見失う事の無いよう、毎日こうして自分を確認する。 ―そうだ、俺は間違ってない。 本当の平和がこんなものなら、俺は平和なんて望まない。 平和で苦しむ人々…なんて滑稽なんだろう。 「まだ君みたいな人、残ってたんだ…」 刹那、俺の耳に聞き慣れない声が響く。 フードを被るその人物は…声からして女性。 チラリと見えた目は珍しげで 嬉しそうだった。
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