Prologue

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   大戦に負けたある国は戦勝国の手によって憲法を書き換えられた。  軍隊を持つことや交戦権の行使を禁じられ、有事の際には駐留する戦勝国の軍が対応することになっていた。  しかし、その国は冷戦という時代の中で最低限の自衛手段を持つことが迫られ、軍隊ならぬ軍隊を持つこととなる。  軍隊ならぬ軍隊はその国の経済力を反映し、非常に高いレベルの装備と人員を有し、世界でも有数な組織となった。  隣国の独裁国家の弾道ミサイル問題が浮上すると、同盟国となり友好な関係を築く戦勝国と共に装備を強化し、実質的レベルでは軍隊といえる強力な組織として今日存在する。  だが、しかしその軍隊は所詮、軍隊ならぬ軍隊だった。  平和憲法と呼ばれる憲法の元ではシビリアンコントロール(文民統制)の名の元に軍隊ならぬ軍隊は動かなくてはならなく、有事の際にすぐに動くことは出来ない。  国際社会での平和活動にも自由に動けず、論議がつきまとう。  政治家たちが議論している間に弾道ミサイルはその国の頭上を通りすぎ、戦勝国と共に強化した装備は役に立たない。  隣国と領有権で揉める無人島を奪われても何も出来ず、別の国にも島を狙われ、横暴を許していた。  軍隊ならぬ軍隊は優秀でも手綱をとる者たちがそれを生かせないのだった。
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