Gift

10/16
前へ
/19ページ
次へ
そして翌日。宣言通り、同じ時間に彼がやって来る。 「こんにちは」 「いらっしゃいませ」 私はすでに自分で選んだリボンをかけた商品をカウンターに置いた。 「さあ、これでお持ち帰りになれますよ」 どうだ、と言わんばかりに得意げに彼を見ると、彼は驚いたような複雑な表情を見せた。 「これは……どうも。お手数をおかけして……」 ゴニョゴニョ呟く彼は懐を探って財布を出し、お代はいくらですかと聞いてきた。 私が商品から外した値札を見せると、とたんに彼の顔がぱっと明るくなった。 「すみません。あいにく持ち合わせがありません。 また明日ここへ来るので、それまで待ってもらえませんか?」 「はいぃ?」 明らかに嘘だ。彼の握っている財布からは、お札が見え隠れしている。 オルゴールはそんなに高価なものではないし、第一、私は手ごろな価格で商品を提供することをモットーとしている。 「払えない」なんて言われたことは、今までただの一度だってないのだ。 そんな私の様子に気づいたのか、彼は急にしょんぼりした風に下を向いた。 .
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加