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「メッセージカード?」
「そう。直接告白することができないなら、せめて手紙を書いてみたらいいんじゃないでしょうか」
「……なるほど」
彼が微笑んだのを見て、私はカウンターの奥からプレゼントに添えるメッセージカードをいくつか取り出した。
「これにあなたの想いをつづって、手渡せばいいと思います」
また「決められない」と言うかな、と思ったが、意外にも彼はいくつか種類の違うカードのうち、ひとつを選んで手に取った。
「そうします。これに書けばいいんですね」
「え、ええ」
しかし彼はカードを見つめてしばらく考え、「明日までに書く内容を考えてきます」と結局それをカウンターの上に戻した。
店のドアから半分外へ出かけた彼をあわてて呼び止める。
はて。なぜ呼び止めてしまったんだろう?
こちらを振り向いた彼の「何か?」という表情を見て、私は自分自身に戸惑った。
「あ、いえ、あの……そうそう、なぜあのカードを選んだんですか?」
「え?」
「昨日はあんなに迷っていらしたのに。今日はずいぶんあっさりと決めたから」
「ああ……」
彼が無邪気な笑顔を作る。
照れながらだけれど、本当に屈託なく笑う。まぶしいくらいだ。
「彼女の……髪の色と、似ていたから」
じゃあ、と出ていったドアを、私はそれからしばらく見つめていた。
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