Gift

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私はとある街で小物店を開いている。 誰かの生まれたお祝いに 夫婦や恋人たちの記念日に 遠くへ旅立つ人へのはなむけに 誰かが誰かに贈り物をするときは、街の人々はたいてい私の店を訪れる。 さきほども、久しぶりに遊びに来る孫に何か贈りたいと、たまにここを利用する上品な老人が商品を購入してくれた。 私はこれを贈られた人が少しでも幸せな気持ちになれるよう、慎重に包装紙やリボンを選び、とっておきの気持ちを込めてラッピングする。 たいていの人がそうであるように、上品な老人は満足そうに微笑んで、とっておきのラッピングがされた商品を持って帰る。 そうして次にその客が訪れたとき、その商品をプレゼントした様子を聞くのが好きだ。 例えば相手に気に入られなかったとしても、贈り物に込めた想いは物に残っている。 愛情や感謝や祈り、目には見えないけれど、それらはきっと選ばれた物に宿っているのだ。 だから私はいつも、商品を包むときには幸福な気持ちを込める。 受け取った側に、少しでもその幸福な何かが伝わればいい。そう願って。 .
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