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最初、いきなり店のドアが開いて誰かが顔を出したことに、彼はひどく驚いて目を丸くした。
頬を真っ赤に染めて「あの、その、すみません!」と立ち去ろうとするのを、私は笑いながらひき止めた。
「良かったら中へどうぞ。もっと色んな商品があるんですよ」
「あの、いえ、でも……」
「いいから、いいから」
もそもそと何か呟く彼の手を取り、半ば強引に店の中に招き入れる。
見てもらいたかったのだ。
私がひとつひとつ吟味し、仕入れ、ときには自分で製作した商品たちを。
いちばん魅力的に見える角度で、いちばん魅力的見える光加減で、目に留まる者に語りかけるように陳列された自慢の商品たちを。
外からだけでは分からない、この店の細かな内装も。
案の定、彼は薄く唇を開き、ぽかんとしたように店内を見回した。
「ね、外から見るよりもずっと多くのものがあるでしょう?」
「本当だ……そんなに広い店じゃないのに……」
すぐに、しまった! という表情をして彼が自分の口を押さえる。
私はくすくす笑いながら「ええ、そんなに広い店じゃないのに」と大きくうなずいて見せた。
「すみません、失礼なことを……」
「いいえ、本当のことですから」
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