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どうぞお好きにご覧ください、と手で棚を示すと、彼は微笑んで商品たちを眺め始めた。
装飾の施された小箱や、きらきら輝く香水の瓶を手に取り、また棚に戻す。
やがて彼は何か思い付いたのか、弾かれたように振り返った。
「あの……!」
「お値段なら多少は融通がききますよ。初めてのお客様にはサービス価格でご提供しちゃいます」
「あ、いえ、そうではなくて……」
青年はもじもじと言葉に詰まった後、つかつかとレジカウンターの前に立つ私に近づいてきた。
「じ、実は、贈り物をしたい人がいるのですが……」
「あら、ではご自宅用ではなくてプレゼントをお選びなのですね」
「ええ、まあ。そ、それがですね……僕はその方とお話ししたことがないのです。
それで、その……どんなものを贈れば喜んでもらえるのか分からなくて……」
ははあ。私の中のアンテナがぴんと立つ。
「なるほど、なるほど。その方を『想って』品物を選びたいと」
とたんに彼の顔が真っ赤になる。
かわいいな、と心の中で私はそっと微笑んだ。
「では私も一緒に選んで差し上げましょう。参考になるかどうか分かりませんが、私も一応プロですから」
「いえ、あの……」
「で、その方はいったいどのような方なんですか?」
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