5人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「いつも少し離れた場所から見ているだけなので、どんな人なのかまでは……」
真っ赤な彼が困ったようにぽりぽり頬をかいて、ぽつぽつと話し始める。その様子はとても初々しい。
「見た目の雰囲気や、身につけているものを思い出してみてください。そこから、その方の好みを探りましょう!」
「そ、そうですね……彼女はとても……そうだな、とても笑顔が素敵な人です」
そう言って照れたように笑う彼の笑顔も、とても素敵だ。
「それと、最近はよく本を読んでいるのを見かけます」
「なるほど、お相手は女性で……読書が好きな方なんですね。これなんてどうかしら? きれいな模様の入った栞です」
私が模様の違う栞をいくつか手渡すと、彼はそれをしげしげと眺めて「いいですね」と曖昧にうなずいた。
「……どう思います?」
彼の問いかけの意図をはかりかねて首をかしげて見せると、軽く声を立てて彼は笑った。
「あなたはこういう物を使ったりしますか?」
「ああ。ええ、ときどきは。私はもっぱら、気に入ったページには付箋を貼っています」
私はよく雑誌を読む。次の仕入れの参考になるような商品や、部屋に飾ってみたいと思うような小物を見つけては、付箋で印をつけておく。
栞は本を広げると落ちてしまうが、付箋は目的の場所に糊でくっつくから便利なのだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!