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翌日。
彼が店を訪れる前に、私はそのオルゴールを丁寧に磨いて、傷や汚れを防ぐために、柔らかい紙で包んでおいた。
「いらっしゃいませ」
店のドアに付けた鐘がコロコロ鳴って、恥ずかしそうに顔をのぞかせた彼を招き入れる。
「こんにちは」
「本当に時間通りですね」
「ええ、ちょうど仕事の休憩時間なもので」
私は笑いながらうなずくと、紙で包んだ商品と、いくつかの種類の箱と包装紙を用意した。
「箱はこちらでいいと思います。包装紙は何色にしましょう?」
それに合わせてリボンの色も決めねば。
彼は首をかしげて、何枚かの色の違う包装紙を眺めた。
「ええと……落ち着いた色がいいかな。これか、それともこっちか……」
しばらくうーんと唸った後、彼は困ったように笑いながら私に顔を向けた。
「決められません」
「へ?」
「どれも合うような気がするし、どれも違うような気がする。決められません」
「は、はぁ……」
目の前の好青年は、笑ってはいるが真剣に悩んでいるようだったので、何を言っているのやら、と突っ込むこともできない。
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