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「あんた、奈津も騙してるんじゃないでしょうね?
いい加減に都合の良い時だけいい子ぶるのやめなさいよ。」
「まさか。あんなガキ騙しても何のメリットもねえしな。
まあ、麻百合さんの前では“いい子な優斗”で通ってるが。」
メリット重視の八方美人。
意図的な二重人格。
大人や自分にとって大事な人間には、明るく真面目な“表”の自分を出して偽り。
里菜や翔太など、偽る必要のない人間には冷酷で口の悪い“裏”の自分、つまりは本当の姿を現す。
表と裏、言わば光と陰を場合によって使い分ける人間。
使い分けられることには尊敬するが、本当の人格を知っている里菜には、偽りの姿の優斗が気持ち悪くてしょうがない。
いくら顔が良くても、正直かっこいいとも思えない。
まあそれは、付き合いが長いというのも関係あるかもしれないが。
「そういえば、翔太が探してたわよ。あんたのこと。」
「ああ…いいよ別に。どうせまた、“新しい技を開発したから見てくれ”って言うんだ。
面倒くせえんだよ、あのカス。」
「ずっとそうよね。あいつ、小さい頃からあんた相手に新技の特訓してたもんね。」
「まあ、俺様以外にあいつの技を受け止められるエリートそう居ねえからな。
とはいえ、いい加減うざってえよ。」
里菜と翔太と優斗、この3人は幼なじみだ。
特に、小学2年の時に大阪から引っ越して来た翔太以外の2人は、生まれた時からずっと一緒に育った。
幼稚園や小学校、中学校はもちろん、現在通っている高校も一緒。
翔太がやって来てからは、同じ霊能力者ということもあり、3人は何をやるにも常に一緒だった。
最近は少しバラバラになりつつあるが。
「俺が来たこと、翔太に言うんじゃねえぞ。あいつに会うの面倒くせえ。」
「うん。」
こんな言い方をしているが、翔太と優斗が本当は仲が良いのは里菜が一番よく知っている。
だからこそ、こういうことも平気で言えるのだと。
「ていうか、そんな話する為に来たんじゃねえんだよ。
あのレインコートのガキがお前探してたぞ?」
シズク
「え?雨のこと?」
「大声で手鞠歌を唄いやがるからうるさくてしょうがねえ。
お前、早く行って止めてこいよ。」
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