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アマノ シズク
天野 雨。
こういう字を書くのだと、本人が教えてくれた。
自分の名前だけは漢字で書けるらしい。
綺麗で真っすぐな黒髪をいつもおさげに縛り、前髪が長く目を上半分隠している。
目が大きく、猫をイメージさせる顔立ち。
そして、水色のレインコートと長靴。
一番好きな色は水色なんだとも彼女は教えてくれた。
どこの家の子かは知らない。
ただある日、神社の前を通り掛かった時に出会った。
それまで、接点は何ひとつなかった。
彼女についてはっきり分かることは、ひとつ。
その計り知れない想像力。
本当なのか、嘘なのか。
雨の話は常に壮大で幻想的。
おそらくは、本人ですら。
夢と現実が混同しているのであろう。
会う約束などしていないのに、したつもりで待ち合わせ場所にやって来る。
「りな、きょうこそしずくはリュウをつかまえにいくぞ。きのうはしっぱいしちゃったけど、きょうこそは。」
「うん、じゃあ私も協力するね?」
「ほんとうか?いいけど、あしでまといにはならないでくれよ。」
「うん。がんばる。」
いつのまにか、日常的になっていた。
こうやって、彼女と一緒に夢を語ることが。
苦痛ではない。壮大すぎる話についていけなくなることはあるけれど。
雨は妹のような存在になり、かわいいと思う。
「おうさまのいらいでな、キョジンをたおすことになったんだ。
りなもきてくれよ。あした。」
「うん。いいよ。」
「ほんとうか!?」
不思議な女の子。
彼女の正体は、よく分からない。
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