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数分後、奈津に夕飯の後片付けを任せて里菜も外へと出た。
もちろん部屋着のままではなく、戦闘用の服に着替えて。
といっても何か特別なものがある訳でもなく、決まっている訳でもない。
ただ単に動きやすい服に着替えただけ。
やはり母のように数秒で変身はできなかったけれど、いつもよりかは急いだつもりだ。
全力で走り、屋根を飛び越え、月に向かって跳躍する。
こういった身体能力の高さは霊能者ならではのもの。
もちろん、学校の体育の授業などでは周りに合わせ手加減しなければならない。
「…。」
無言で現場へと急ぐ里菜。
目指す場所は千霊山の麓から1キロの場所。
急がなければ。
母が出て行けば、決着が早まるのは必須。
全てが終わった後でたどり着いても意味がない。
急がなければ…。
…。
緊張していた。
胸が高鳴り、鼓動が聞こえる。
1キロ離れているとはいえ、妖怪の出現という危険な事態だ。
恐怖はもちろんある。
でもそれ以上に、初めて任務に携われる喜びもあった。
高揚している。
大丈夫だ、怖くはない。
母が戦っている。おそらく優斗と翔太も。
私が心配する必要はない。
だから私は、不謹慎かもしれなくても。
素直に嬉しいと感じていよう。
これも進歩だろう。絶対。
逸る気持ちを抑えながら、里菜は夜の街を駆け抜ける。
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