第1話 臆病少女

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「この辺かな…。」 遠くに黒煙が見える。 邪龍のブレスにより舞い上がるものだろう。 その煙の中に、確かに龍の影がある。 1キロ離れた場所と言われたが、実際にはもっと近いかもしれない。 小さくだが、煙が晴れると邪龍の姿はよく見えた。 街が破壊されたというようなことはなさそうだが、まだ倒せてはいないようだ。 母はもうあそこにいるのだろうか…? 「よかった…。被害も少ないみたいね。」 この位置からではさすがに戦っている人間達は見えないものの、里菜の想像以上に被害は少ない様子だった。 千霊山の木々がわずかに倒れているのが見えるが、それぐらいだ。 グオオオオッ!!!! 「うっ…。」 その雄叫びは間違いなく邪龍のもの。 感じる大気の揺れ、妖気の乱れ。 おそらく誰かの攻撃により苦しんでいるのだろう。 敵とはいえ、悲痛に聞こえる。 決着はもうすぐのようだ。 「…ん?…」 その時。 何かに気付き、里菜は辺りを見回す。 微かな邪気。 あの邪龍とは別の乱れた妖気。 近付いて来る。 ゆっくりと、でも確実に。 私に、迫っている。 妖怪だ。 近くに、何かいる。 「…!!」 それを確信した瞬間、それがどこにいるのかはすぐに分かった。 右側後方。民家の影。 家と家の間を、誰かが…。 いや、何かが走っている。  
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