第1話 臆病少女

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------…。 「全く…。また駄目なのね。」 「…ごめんなさい…。」 修練場から出て、私は母に怪我の手当てをしてもらいながら地面を眺めていた。 特に意味はない。 ただ、母の目を見ることができないだけだ。 上等な紫色の着物。 光を淡く跳ね返す帯。 百合と波をイメージした模様が美しく、母にはとても似合っている。 …が。 今はその姿すら見られない。 それほどに…バツが悪い。 「あなたも、もう17歳…。そろそろ任務に出てもいい頃よ?私なんて15の時にはもう戦っていたのに…。」 「…。」 「おかしいわね…。“霊槍”も使いこなせているし、妖術や体術なんて優秀な方なのに…。どうして本物の敵を前にすると動けなくなるのかしら?」 「…それは…。」 本当はわかっている。 どうして実戦に弱いのか。 恐怖はないと、そう思い込んでいるけれど。 本当は怖い…。敵が現れて、怪我をして…。 自分に何ができるのかが分からなくなってしまう。 自信を失い、動けなくなってしまう。 つまりは…戦いに臆しているのだ。         ジャコン 「今日の相手は“蛇恨”。侮ってはいけないけれど、あなたの実力なら十分に倒せるはずよ? なのに…逆に手傷を負わされ、私が助けるまで何もしないなんて…。」 怪我をした右手が痛む。 軽い傷だ。 邪悪な蛇の魂の集合体と言われる蛇恨は弱い妖怪ではあるけれど。 その牙には毒が含まれている。 母の術のおかげで毒は抜かれたけれど。 痛みを帯びる、噛み傷は残ってしまった。 「あなたに足りないものは…“自信”よ。そして、“経験”。霊能力者たるもの、怖がっていてはいけないの。 心を強く持ちなさい。退いては駄目。あなたは、十分強いのだから。」 「…はい。」 母の励ましの言葉は…。 いつも通り、プレッシャーに満ちていた。  
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