第1話 臆病少女

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「翔太…。」 スポーツ刈りの短い茶髪。 白目の大きな瞳に、大きな口、耳。 輪郭はシャープだけれど、顔のパーツは全て大きめの少年。 背も高く、筋肉質。 歳を追うごとに段々と男らしく、角ばった身体にはなっているけれど。 無邪気な笑顔と、やたら白い歯だけは変わらない。 鬼佐翔太。 隣の家に住む同級生。 そして彼も霊能力者の家系に生まれてきた人間だった。 「相変わらず暗い顔やなあ。また麻百合さんに何か言われたん?」 神矢家の家を囲む塀の上に座りながら話す翔太。 マ ユ リ 麻百合とは、母の名前だ。 相変わらず、翔太は妙に鋭い。 「うるさいわね…。なんでもないわよ。」 「また言われたんやろ?“どうして実戦に弱いのかしら?”って。」 「うるさいっ!!」 思わず里菜は叫んでしまった。 言い当てられたことが悔しい。 勉強はできない癖に、どうしてこういうことは分かるのだろう。 「図星やな?まあ麻百合さん、エリート思考やからなあ。 気にすることないやろ。」 「気にしてないわよ。…いつものことだし。」 言ってから、少し後悔した。 “いつものこと”。そう言い切ってしまう自分が嫌だ。 本当は、早く成長しなければいけないのに。 翔太と里菜の決定的な違いは、未だ修練場に篭りきりの里菜に対し、翔太はもう任務に出ているということだ。 同い年なのに…。そこが悔しくなる。 翔太自身は何も言わないけれど。 「なあ、優斗知らん?家におらへんねん。」 「え?知らないけど。」 里菜の返答を聞き、少し困った顔をする翔太。 先程から探していたのだろう。 私に声をかけてきたのも、それが目的だったと分かる。 「そっか…わかった。他、探してみるわ。」 「うん。」 手を振りながら、里菜の視界から翔太は消えた。 …はあ。  
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