第1話 臆病少女

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もちろん、奈津も霊能力者だ。 母に聞いた話では、妖術はあまり得意ではないが体術に長けているらしい。 あの大きな身体ならば肉弾戦には有利だろう。  シング “叉魂”も使いこなせているらしいし。 階段を下りて玄関に向かうと、そこには確かに優斗がいた。 そういえば…翔太がこいつ探してたわよね。 「やあ、おはよう里菜さん。今日も朝から修練したんだって? 土曜日だっていうのに、里菜さんは本当に熱心だね。」 優しい笑みでそう言う、その男。 「あんたね…。」 私は呆れてものも言えない。 志羽優斗。 長身で、筋肉質な身体。 身体つきだけを見れば翔太に似ているが、決定的に違うのはそのルックス。 小顔で、綺麗な二重の目。 高い鼻、形の良い口。 外国人のようにも見えるその整った顔立ちに、爽やかなイメージを醸し出す黒髪のウルフヘアー。 外見だけ見れば、道行く人が振り返ってもおかしくないその造り。 しかし…。 決定的に良くないのは…。 「…なんだよ?珍しく“イイ人モード”で挨拶してやったのに…。 その顔、まるでこの俺様に会いたくなかったみたいだぞ?」 その…最悪な性格。  
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