第三章/追跡

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「あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」  堪らず渦山は叫びだした。同時に我が身を襲う、圧迫感と悪寒。  さらに強くなる目線の嵐は、無言の中だからこそなお強い。  目線は、矢。  沈黙は、弓。  沈黙からつがえられた回避不能の敵意は、一切の容赦なく渦山をめった刺しにする。 「やめろ。やめろやめろやめろやめてくれ!」  ――寒い、寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い!  その場でうずくまって頭を抱える渦山。それを見下す、X染色体の海。 「目は口ほどに物を言うって聞くけど……本当なんですよ?」  ただ震えている渦山の耳に、天使の声が聞こえた気がした。
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