4/10
前へ
/525ページ
次へ
「これは…!!」 村に入るとリエルはすぐに惨状に顔を歪めた。 家屋の壁は崩れ、所々では村人達が倒れている。 「ベチアおばさん!」 その中によく知っている顔を見つけて、駆け寄る。 「おばさん!しっかりして!」 「リエル…ちゃん、無事、だったんだね?」 「何があったんですか?誰が、こんな」 思わず息を詰まらせた時、ベチアの視線がリエルの後ろ―レイドの方へ移されたのがわかった。 「おばさん?」 「あんたが、あんたが、この村に来なければ…。もっと、早く、出ていってくれさえすれば、こんなことに…は、…ならな…」 「おばさん?ベチアおばさん!」 ゆっくり目を閉じていくベチアの名を呼ぶ。しかし、その目は開かなかった。 「…ベチアおばさん?こんなことって…」 目の前に横たわる身体を見て力なく呟く。 両親が忙しく王都の研究所にこもるようになり、兄が旅立ってからはベチアはリエルのもう一つの家族だった。 そのもう一つの家族が息絶えている。 それがまだ受け入れられなかった。 「ドオォン」 「!?」 その時、村で大きな音が響き渡った。 その音にはっと顔を上げる。 「今の音、村長の家の方だ!」 「!!行くぞ!」 レイドに頷き返し、リエルは走りだした。
/525ページ

最初のコメントを投稿しよう!

152人が本棚に入れています
本棚に追加