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「っ…」
(このままじゃ)
シェダルの動きは、外見に似合わず素早い上、一撃が重い。
正直、レイドと二人掛かりでもきつかった。
(いや、違う。私が足を引っ張ってるんだ)
常にこちらを気に掛けながら戦っているレイドは恐らく本気をだせていない。
少なくとも魔物相手ではリエルに前衛を任せて使っていた術をシェダル相手には使っていなかった。
“ガキイィン”
既に何度目か、斧と剣が激しくぶつかり合い火花が散る。
「『奴』につけられた傷は大分癒えたようだな」
「うるせぇよ」
「だが、まだまだ本調子ではないようだなっ」
シェダルが更に力を加え、拮抗していた力が崩れ、レイドの方へ傾く。
「っ…、ぐ…っ!!」
それを押し返そうとしたレイドの顔が不意に痛みを堪えるように歪む。
(傷が開いた!?)
服に滲み出した血を見て、一番酷かった傷を思い出す。
あれはまだ完治していなかった筈だった。
「獅子戦吼!」
「ぐぁ!」
そんなことを考えている間にもレイドの身体が吹き飛ばされ、家の壁に叩きつけられる。
崩れた壁に沿うように地へ落ちたレイドにシェダルが近付いていく。
もう恐いなどと思っていられなかった。
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