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コンコン 「はい…」 荷物を纏めていると、家のドアを叩く音がした。 「ミレナお姉ちゃん!?」 ドアを開けて立っていた女性に目を見開く。 立っていたのは、ミレナ・ウォール。幼なじみで親友のセレアの姉だった。 「お姉ちゃん、何で?」 「これを渡しにきたの」 そう言いミレナは少し大きめの袋を三つ渡してきた。 受け取って中を見ると、二つにはグミやボトル、包帯、薬など、もう一つには食材とレシピが幾つか入っていた。 「お姉ちゃん、これって」 「何が必要かわからなかったけど、このくらいしかできないから」 そう言って、ミレナは今度はリエルの背後にいたレイドを見る。 「ねぇ、そこの貴方」 「ん?」 「リエルちゃんのこと、宜しくね。リエルちゃん、強いようで弱いところあるから守ってあげて」 「ちょ、お姉ちゃん」 「何だ、まだいたのか?さっさと行けよ」 家の前を通りかかったらしい村人が怒鳴るのが聞こえてくる。 「…もうそろそろ、行くね。これ、ありがとう」 受け取った袋を荷物の中にしまうと、肩にかける。 「リエル、貴女の両親とバルツには会えたらだけど話しておくわ。あとセレアにもね」 「うん、ありがとう」 「見送りに行きたいけど、これ以上遅くなったらお父さん達が煩いから帰るわ。…二人とも、気を付けてね。リエル、さよならは言わないから」 「お姉ちゃん…、私も言わないよ。じゃあ行こうか」 「ああ」 レイドに声を掛けてから歩きだす。 「リエル!」 少し歩いたところでミレナの声が聞こえ振り返る。 「行ってらっしゃい!」 「!!行ってきます!」 聞こえてきた声にそう返し、再び歩きだす。 もう後ろは振り返らなかった。
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