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「そう? なんだ、その可愛い太もも、触れると思ったのに」
うわ、なんでそんなこと言っちゃうの。
「ちょ、ちょっと、もう」
でも、武蔵先輩、ゆるせちゃうくらいカッコイイ。
カッコイイのに変なこと言うから笑ってしまう。
「ハ、やっと、笑った。な~んか安心した。腹、猛烈に空いてない? 飯にする?」
「は、はい」
武蔵に促されるまま、その場に座り、お弁当をあけた。
先輩、私の笑顔に安心したって。
私、そんなに苦しそうな顔してたのかな。
あ、岩、エタノール消毒するの忘れた…。
まあ、いいか。
まだ、寒い風が、山頂をぴゅーっと吹き抜ける。
「うわ、さむ。春だっていうのにな」
武蔵は予備のジャケットを自分のリュックから出して玲奈の肩にかけてくれた。
ジャケット、大きくて暖かい。
「マジで、温かいところまで、ちゃ~んと送り届けるから。安心して」
おにぎりをほお張りながら武蔵が言う。
「はい。お願いします」
なんだか照れるけど。
食べ終わったら、ちゃんと、この山を降りよう。
武蔵先輩と一緒に。
山笑う、その先の、温かいところまで。
-了-
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