春山淡冶

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  「準備はいいですか? それでは、出発しま~す」 男の人が声を張る。 「あれがサークルのリーダー」 美恵が、靴紐を縛りながら、玲奈に教えてくれる。 大学の登山サークル。 といっても、初心者向けのゆるいサークル。 玲奈は、このサークルの部員ではない。 部員で親友の美恵に強引に誘われのだ。 登山といっても、もう雪も残らない小高い山。 登山に夢中の美恵に『大丈夫。登れるよ』と言われたけれど。 登りきれるかな……。 実際、山を目の前に、玲奈は不安だった。 美恵の後ろをついていく。 上を見上げると、辺りの木々は、緑を芽吹き始めるか始めないか、 足元は下草たちが、春が来たとばかりに緑の若葉を伸ばし始めていた。   玲奈は、熊除けの鈴を鳴らしながら、山道を踏みしめた。   
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