☆プロローグ-shadow-

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死とは何か。 ワタシに課された最大にして最も身近な問い。 普通、生物ならば死をおそれるだろう。 当たり前だ。 では、ワタシはなんなのだろうか? 生物? 否、ならば死は一度のみなはず。 では、ワタシは生物ではないのか? 否、生物の条件はすべてそろっている。 呼吸はしている 自我もある 話せる ほかにもきりがないくらい生きている証拠ならある。 では何故死がないのか。 ワタシは影。 よくわからないが、〈さまよう影の街〉に縛られている。 この街がワタシのすべてだ。 つまり、ワタシはこの街でのみいきることを許されたいわゆる〈籠の中の鳥〉なのではないだろうか? わからない。 死が怖いか? 何度死んでも蘇るのだから怖くない。 否、怖い。 思い出したくもない死に方をしたこともある。 あれは、随分と前。 一人でふらりと街に現れた人間は面倒くさいという理由で街を爆破し、ワタシはビルの下敷きになった。 あの人間の素晴らしく爽やかな笑顔。 ワタシは忘れることができない。 圧死だけではない。 斬られた時もある 燃やされたときもある しかしそれでもワタシは死ねない。 もしもこの世に神がいるなら、どうかワタシをいい加減死なせてくれ。 この世界にはもう居飽きた。 〈player接近!player接近!〉 ヤレヤレ……今夜もまたお客のようだ。 見下げた先には二人の人影。 大剣を担いだ男と 白いコートの少年。 今夜も始めよう。 死ねないワタシの小さな抵抗を。
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