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カツカツ…
コツカツ…
二人分の靴音がネオンだけが明るい街に響く。
「つくづく思うんだけど、こんな街が本当にあったら息苦しくて死にそうだよ。」
白いコートの裾をはためかせて歩く少年が隣を歩く男に言う。
「それは、人がいないからか?それとも、この街本体がか?」
「どっちも。でも、上條の世界はこんな街だらけなんだろ?」
「あぁ。」
「人間ってやっぱりわからないな。」
少年は呆れたように無人の車をみる。
「俺はエルフがわからんな。俺からみたら、このぐらいの明るさがふつうだ。」
そういって上條は車に目を向けた。
「はぁ!?何この車外車かよ!!」
そのあとしばらく玩具を見つけた子供のように車を触りまくる上條。
「こんな鉄の塊のどこがいいのさ?」
少年はばかばかしいと言わんばかりにそんな上條を見ている。
「鉄の塊!?お前、外車は男の夢だぞ!」
「知らないね。それに前は男の夢は、無人島だ!とか訳わからないこと言ってたよね。」
少年は黒く輝く高級外車を一別すると、小さな声で「グラビティ…。」とつぶやく。
メコッ
バキバキバキ
何かがへこむような音と明らかに何かが壊れる音が響く。
「あ、あぁ……さらば外車よ……キーついてたから乗ってみたかった。」
男は口ではそういうものの特にショックを受ける様子もなくズボンのポケットからタバコを出す。
「クエスト中ぐらい控えなよ。」
「気にすんな。禿げるぞ。」
「禿げないから。たぶん僕より上條の方が先にはげるよ。」
そう言いながら歩き出す二人。
彼らの後ろではさっきまでネオンの光を反射していた黒い外車がただの黒い鉄の塊とかし、アスファルト舗装道路は隕石でも衝突したかのようにクレーターがあいていた。
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