12人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
「フッ……クエストボス敗れたり!」
上條は嬉しそうに呟くと大剣を構え、影に切りかかる。
〈追加スキル、瞬刃、光炎確認。〉
走り出した上條の体を輝く炎が鎧のようにまとわりつく。
そして、上條の体を水が覆った瞬間、残像を残して彼は消えた。
「悪く思うなよ。痛いのは一瞬だ。」
そして、彼の声が影に届く。
しかし、影が声を聞き取る前に上條の大剣が影を真っ二つに切り裂く。
さらに伐った箇所から炎が影を焼き尽くしていく。
〈ぉぉおおお゛〉
影が声にならない悲鳴を上げる。そして、炎を振り払うように暴れる。
体が真っ二つであろうと関係ないらしい。
しかし、炎は消える様子はなくむしろ広がって影を焼き尽くしていく。
上條は追加スキル、光炎を解除するとたばこに火をつける。
スキル、光炎……太陽のように燃え続ける炎。その火を消せるのは同じ光炎か、闇水のみ。
「悪いな。俺たちもどうしても必要なものを手に入れなきゃならないんだ。」
光炎に焼かれ、もがく影に上條は呟く。
「やっぱり、上條のスキルは強いね。僕はてっきり最初は弱めのスキルで攻めると思ってた。てか、毎回言ってるあの「何とかは敗れたり!」って何?」
いつの間にかビルから下りてきたサーフが上條に尋ねる。
「ほら、巌流島で宮本武蔵が「佐々木小次郎敗れたり!」って言って勝ったろ?あれ以来日本人が決闘をするときは先に「敗れたり」って言った方が勝ちなんだよ。」
上條の答えに首をひねるサーフ。
「わからないなぁ…声出したら今から攻撃しますって言ってるようなもんじゃないのか?」
「そこにはたぶん現代人やエルフにはわからない深い何かがあるんだろ。」
しみじみと言っている上條だが、決闘にそんなルールはない。言った方が勝ちということもない。
「で、真意は?」
「何となく言ってみたかった。」
サーフはあっさりとそれに気がついたらしい。
上條は肩をすくめた。
「やっぱりね。でも、なんでいきなり光炎使った?」
「気づいてなかったのか?サーバーをみてみろ。」
上條に言われてサーフは灰色のスマートフォンを取り出す。
最初のコメントを投稿しよう!