千里を彩る

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《キーンコーンカーンコーン》  学校中にチャイムが鳴り響き、あたし達の教室にも先生が入ってくる。 「お前ら席に着けよぉ! 出席取るかんなぁ!」 「先生っ! 月影君以外は全員います」  委員長の夏目さんが周りを見渡しながら、眼鏡を上げた手をそのまま上に挙げる。  最近はこの一言が彼女の朝の日課となっていて『彼』のことをあまり良くは思っていないんじゃないかとあたしは感じている。  夏目さんの言葉どおり、教室窓側、一番後ろの席がポッカリと空いていた。 「アイツまたかよっ! 入学早々サボり倒しやがって!」  出席簿で教卓を《コツコツ》叩きながらイライラした様相で頭を抱える先生。 「入学者名簿の記載ミスでアイツの名前が無いからって遅刻を免れてるとでも思ってんのか!」  心中お察しします……。  でも、入学者名簿の記載ミスなんて蒼ちゃんも運が良いのか悪いのか。  それとも、もっと別の……。  まぁ、学生課に聞くと、明日には修正版の名簿が発行されるとは言ってたから問題ないか。 「土井ちゃん! 蒼の事は放っときなって」 「そーだよ土井ちゃん! 蒼は学園一の自由人だからな」  怒り心頭の土井先生を、クラスの男子達が冗談混じりに諭す。  『学園一の自由人』っていう表現はなかなか的を射ているなぁ。 「んな訳にいくかっつーの! 俺の朝のホームルームを何だと思ってんだ!」  土井先生も蒼ちゃんの担任だと一年間大変だろぉなぁ……。  そんなことを考えながら、あたしはうわの空で外を眺めていた。 「九十九ぉ! お前は蒼のオモリだろーがっ! なんか知らんのかぁ!?」 「えっ? あぁ、ちょっと電話してみますね」  いきなり名指しされたあたしは少しばかり動揺しながら携帯を取り出し、蒼ちゃんの番号を呼び出してダメ元で発信する。
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